こんにちは。ノースウェスタン大学に通う三年生のKonkobonkoです。アメリカの医学部志望(Premed)です。今回は、アメリカ(カナダ含む)のメディカルスクール受験過程を紹介したいと思います。
以下の情報は私個人の経験によるものであり、公式ホームページではありません。ノースウェスタンのHealth Professions Advisingのウェブサイト、そして各受験校のウェブサイトなどで必ず際確認してください。
まず最初に:アメリカで医者になる過程:日本とは少し違う!
アメリカで医者になりたい場合、学士号を取得した後、メディカルスクール(医学部)で医学専門の教育を受けます。従来は四年間のメディカルスクール教育を受けてMD(Doctor of Medicine)を獲得し、研修生(ResidentやFellow)として現場研修を数年行ったあと、やっと一人前の医者になれます。
Premedって何?
Premed(Premedical trackの略)は、メディカルスクール志望の人のことを指します。ノースウェスタンの場合、これは専攻やプログラムではなく、個人の意思・本意のことを指します。また、大学生に限らない名称なので、社会人のPremedの方々も少なからずいます。医学に関係なしの職業に就職したあと、医者にやっぱりなりたいと決心し、大学へ戻って受験に必要なクラスを取って夢を追いかけている方もいます。私の友達の中では高校時代からPremedだと自覚していた人、大学二年生になって医師になりたいと初めて思った人、また一年生からPremedだったが必須科目の有機化学の授業が過酷すぎて医者の道を諦めて他の道を選んだ人など、たくさんのケースをみます。
私の場合、元々医学に興味はあったのですが、Premedとして本格的にメディカルスクールを目指そうと決めたのは大学一年生の秋学期の終わり頃です。キャンパス内で行われる様々なメディカルスクール紹介イベントに参加し、アドバイザーや先輩たちに相談し、オンラインで情報収集などを行った後、この道を選びました。
学部生の間の専攻は医学と全然関係なくてよし?!
メディカルスクール受験に必要な科目は生物や科学の専攻に必要な科目とほとんど重なるので、結果的に多くのPremedの学部生は生物や科学を専攻します。しかし!アメリカでは高校卒業後そのまま医学部に通う日本とは違い、医者になるために学士課程の時点で決められた専攻を選ぶ必要はありません。メディカルスクールを受験するために必要な単位を全て事前にこなせていれば、全く医学と関係性のない分野を学部生の間は専攻にしても構わないのです。例えばノースウェスタンでは、Premedでありながら、歴史・経済・音楽・工学などの専攻の人、または二次専攻・副専攻としている人が結構います。メディカルスクール自体はDiversity(個性・多様性)を重視するので、その専攻により学んだことなどを医学につなげて自分のユニークさをエッセイや面接などでアピールすることができれば、一種の利点になります。私の場合ピアノ科と脳科学科の二次専攻なので、脳科学の必須科目はPremedの必須科目とほぼ100%被っています。
受験過程ってどんな感じ?
日本では医学部受験の際合否は試験と面接の結果で決まりますが、アメリカの場合は試験(MCAT)と面接以外にもボランティア、研究経験、成績、推薦状、Shadowing(お医者さんの職場見学)、Personal Statement(なぜ医者になりたいのかを書く小論文)、リーダーシップ経験等により合否が決まります。受験者を総合的に人としての評価(Holistic Review)を行う為、自分の夢・可能性をいかに上手く話せるかが決め手になってきます。
6−7月:Primary Applications を提出 (一次書類審査)
第一次審査用の書類をAMCASというサイト(大学受験で使うCommon Applicationのようなもの)で志望学校に提出します。記載する情報は成績、MCATのスコア、Personal Statement(小論文)、ボランティア経験、リーダーシップ活動、推薦状等を含みます。
8月:Secondary Applications を提出 (二次書類審査)
第一次審査を通過した場合、今度は第二次審査で受験する各校ずつに特定の小論文をいくつか提出します。課題は学校ごとに異なりますが、「なぜこの学校に行きたいのか?」などの質問が出されます。受験生が受けるメディカルスクールの平均数は10−20校なので、場合によっては第二次審査のためのエッセイを何十個も書くことになります。
10月ー翌年3月:Interview(最終面接)
第二次審査を通過した場合、面接に招待されます。これはほとんどの場合現地で行われ、一日中かかります(飛行機代はfinancial needがない限り自費)。普通の面接(Traditional Interview)の形式の学校もありますが、最近はMMI(Multiple Mini Interview)という形式を利用し始めている学校が増えてきています。MMIはいろいろな状況にどう対応するかを見込み出す形式なので、各面接官が出すシナリオに答えて周ります。ノースウェスタンのHealth Professions Advising Officeでは、面接に招待された受験生には練習用のMock Interview(模擬面接)を行ってくれます。
10月ー翌年9月:Acceptance 合格
Rolling Basisで合格通知を出す学校の場合、10月から3月までの間にいつ合格通知が来るかわかりません。Rolling Basisではない学校の場合、一定の日にち(3月ごろ)を学校側が決めてその日に全ての合否結果を出します。Waitlist(保留)になった場合は、メディカルスクールの始業式が行われる数日前(翌年8月か9月頃)に合格通知が届く、なんてこともあるそうです。
メディカルスクールに受かる為に大事なこと
日本の医学部受験と似ているところが、全てのメディカルスクールが超難関な為、大学受験とは違い滑り止め学校と言う願念がないことです。成績とMCATのスコアが平均以上だとする場合、10-30校ほど受けて、インタビューのために呼ばれるのは数校、そして最終的に合格通知は1校、なんていうケースもよく聞きます。GPAやテストスコアがいくら良いからといって油断はできないのです。
Admissions Committee(入学審査を行う委員会)が重視することは:
ー良いGPA(授業での成績):Cumulative GPA(大学時代全科目の成績)とScience GPA(化学、物理、生物、数学など)が4.0 (オールA)に近いほど、合格のチャンスは上がってきます。しかし、1クラスで悪い成績を取ったからといって医者になる夢を断念するのではなく、それ以降のクラスでいい成績をとることができれば困難も乗り越えることができるということを見せられるので悔やむ必要はありません。学部卒業後GPAに不満が残る場合、Post-baccalaureate Programという一年の学士課程終了後のプログラムを提供している大学が数々あるので、そこで医療に関係ある授業を受けて良い成績を取ることで総合GPAをあげることもできます。四年間のGPAは上昇志向が好ましいそうです。ちなみにPremedとしての必須科目(Required Coursework)は受験校により異なりますが、大抵の場合は一年間の生物・無機化学・有機化学・物理学のコースワーク(ラボ含む)を必要とし、学校によっては数学・英語・心理学・社会学・生命論理などのコースワークを必要とするか進めています。詳しくはこちら。
ー良いMCATのスコア: 受験者はMedical College Admissions Test(MCAT)のスコアを学校に提供します。これはセンター試験やSAT同様唯一他の受験者と統一できる秤なので、第一次審査でスクリーニングされるときに重視されます。テスト自体はトータルで7時間ほどかかります。生物学・化学・物理・読解力・心理学・社会学などの分野を試されます。ほとんどの情報はPremed に必要な科目の授業内で習うことですが、三ヶ月〜半年ほど集中した勉強期間を費やしている方々が多いです。有名な試験会社はKaplan, Princeton Review、など。正式模擬試験は試験提供者(AAMC)により販売されています。詳しくはこちら。
ーClinical Experience (病院での経験):これは大まかに言うと三つの種類に分かれます。病院でのボランティア、職場見学、そして病院で働くこと。
- 病院でのボランティア:病院によりますが、これは患者さんを車椅子で同行する、事務仕事、など様々な役割があります。病院という場所はどういうところなのかを実際に体験して理解しているのか、そして患者さんとの交流の経験があるのか(Patient Interaction)、などを問われます。短期間集中的に行うよりは、数年間同じ場所でボランティアをすることが進められてます。ただしボランティアとして医療行為を行うこと(注射、薬剤投与等)はアメリカでは禁止されているので、そこは要注意です。
- Shadowing(職場見学):Shadowingとは名前通り、お医者さんの仕事現場を影のように一日中ついてまわることを指します。Shadowingでお医者さんの一日を自ら観察することで医者の生活が実際どうなのかをもう少し深く理解することが目的です。ドラマなどで象徴される架空上の医者の姿ではなくリアルな医者の姿を身近でみれる為、自分に本当にあった職業なのかが見極められる一つのチャンスです。お医者さんに知り合いがいれば楽ですが、いない場合は近くの病院にEメールを打って頼んでみるのも一つの手段です。ノースウェスタンの場合、Mentorship Programというプログラムで卒業生で医者になった方達と連絡をとることができるので、私の場合はそこから数人のお医者さんと連絡を取ることができ、shadowingの機会をいくつかありがたく頂けました。
- 病院で働く:EMT(緊急救命士), Scribe(医療代書人)など実際に病院で存在する職業で働くことで、病院のシステムをよりよく理解することもでき、給料も出るので、生徒の中では人気です。アルバイト制の仕事の場合が多いので、夏の間、またはGap Yearの間にこのような仕事をして稼ぐのも一つの方法です。しかし資格が必要な場合は、トレーニングなどを事前にこなしていなければいけないこともあります。
ー病院以外でのボランティア:ボランティアを行うことで自分がどれだけ人に尽くす人なのかをアピールできます。音楽を教えたり、老人ホームでお婆さんのビンゴに付き合ったり、フードシェルターやホームレスシェルターでボランティアしたり、などなど。これは自分が実際にに興味あることに時間を費やすことで、人に尽くしたい思いと共に趣味とユニークさを出すことができます。
ーリーダーシップ経験:これはクラブでの会長になったり、チューターとして得意科目を他の生徒に教えたり、何かのイベントを開催したり、新しいクラブや会社や協会を結成する、など。将来の医療のリーダーになるために必要な素質と可能性があるのかを、履歴と実績で見せつけることが大切です。
ー推薦状:多くの学校が理系のクラスの教授から一通、そしてあと数通手紙を用意することを必要としています。もし研究所に入っている場合、その教授と仲良くなって推薦状をもらうことはいいアイディアです。自分のことをよく知っている教授を選ぶことで、良い推薦状に期待できます。正直ノースウェスタンで理系のクラスの教授と近くなるのは最初の二年間は意外と難しいと感じました。なぜなら、入門理系授業(General Chemistry, Organic Chemistry, Physics, Biology)は100人以上のクラスなので先生との距離を縮めるのが少し大変だからです。三年生になると自分の専攻に必要な専門的なクラスも受けられるようになってくるので、もう少し小さめなクラスサイズのため教授のOffice Hourなどにも気軽に通え、授業中も質問などで手をあげることに躊躇うことも少なくなってくると思います(あくまで個人的な考えですが)。また、クラスが小さめだと、先生も自分のことをもっと良く知ろうと努力してくれる感じがします。
ーその他:研究 研究はもしリサーチが盛んな学校に受験する場合は必須同然になってきます。例えば、ノースウェスタンは研究大学なのでメディカルスクールで受験する場合リサーチ経験は重視されます。その場合研究所に所属しているだけではなく、出版などの実績もみられます。研究で成果を出すのは学部生では普通は比較的難しいのですが、カンファレンスやポスターでプレゼンを行うことで研究に興味を持っていることをアピールできます。
もちろん受かる為に上記全てが必要な訳ではないです。
ノースウェスタンPremed特有のプログラム
ノースウェスタンのメディカルスクールは、学部拠点のエバンストンから30分ほど離れたダウンタウンシカゴのキャンパスにあり、Feinberg School of Medicineという名称です。全米でもトップ20メディカルスクールランキングに入る、エリート学校です。利点は、シカゴのダウンタウンど真ん中にあること・周辺に4つの大病院があるから素晴らしい教育を受けられること・米国トップ20位内になを誇るメディカルスクールなので、財力が豊富で環境が調っている、そして研修医になる時にブランドネームなので有利なこと、などなど。
普段からノースウェスタンのPremed学部生はFeinbergとのつながりが強いです。例えば、Shadowing(職場見学・医者の付き添い)をするときにはFeinbergのお医者さんを付き添ったり、シカゴの病院でボランティア経験を積んだり。特にノースウェスタンの生徒特有のかなり有利なプログラムが二つあります:HPME (Honors Program in Medical Education)とNUPSP (Northwestern University Premedical Scholars Program)です。
HPME
7年間のBA/MDプログラムです。HPME合格者は入学時からFeinbergへの進学が保証されます。学部を受験する時点で面接が伴います。MCAT試験などを受ける心配がなく、しかもメディカルスクール入学が高校卒業時点で確定される為、医者になる決心が強く事前に準備をしてきた優等生・特待生には人気です。学部生の間授業自体は他のノースウェスタンの生徒たちと受けますが、数人プログラムのためプログラム内はみんな結構仲が良いらしいです。詳しくはこちら。
NUPSP
ノースウェスタンの大学三年生で必要な科目を終え、一定のGPA以上を獲得した生徒のみ応募できるプログラムです。このプログラムで合格した場合、四年間の大学生活を終えたあとにそのままFeinbergに入学します。この場合他のメディカルスクールに受験する必要がなく、MCAT 試験も受けなくていいので、優秀な生徒たちには人気のプログラムです。この場合のエッセイとアプリケーションを大学三年生の冬休み始めに提出して、インタビューに招待された場合Feinbergで最終面接が行われます。詳しくはこちら。
Gap Yearを選ぶ受験生(浪人生)は増えてきている
学士課程を終えた生徒で、そのままメディカルスクールに入学する生徒は昔は一般的でしたが、最近ではGap Year(浪人)を選ぶ生徒がノースウェスタンでは特に増えてきている傾向だそうです。
浪人生活を選ぶ理由は様々です。例えば、他の職業を見て回って社会人でいる経験を積む、またはメディカルスクールの受験に必要な項目を強化するために病院ボランティア・研究・医療関係の仕事(ScribeやEMT)などを行う、大学生活から休みをとり旅行をする時間を作る、など。日本では浪人生という概念があまり好ましく思われていない気が個人的にはしますが、アメリカでは一年(またはそれ以上)を有意義に使った場合は人生経験などの証になることもあるので、焦らない姿勢は悪いこととはそれほど思われていません(もちろん家でずっとゲームを遊ぶためにGap Yearをとっていたら無意味ですが)。
特にGap Yearが人気な理由は、もし卒業後メディカルスクールにまっすぐ入学したい場合大学三年生の夏の時点でアプリケーションを提出しなければいけないためです。大学三年生の時点で必要なリーダーシップ・必須科目・推薦状を書いてくれる教授との繋がり・研究での成果・病院ボランティアやShadowingの経験・MCAT試験・医療以外のボランティア、などを全て完璧にこなすとなると大学生活をあまり楽しめないと感じる大学生は少なからずいます。合格する確率を上げるためにもできるだけ受験には準備抜群で挑みたい為、四年生の間のいろいろな経験がアプリケーションに大切になると感じている生徒も多いのではないでしょうか。
終わりに
さて、日本の医学部とは少々異なるアメリカのメディカルスクールの受験課程、いかがでしたか。実は、ヨーロッパの多くの国でも日本に似て高校卒業後に医学部へ進学する制度が設けられているので、アメリカの学部卒業後にメディカルスクールへ進学する制度は比較的ユニークな感じがします。人生経験の豊さを重視してくれる一方、試験結果以外にも点数では測れない基準がたくさんある為受験生にとっては別の意味で不安やストレスが増えることもありそうです。皆さんはどちらの制度が良いと思いますか?