【受験生応援企画!】SAT Subject Test: Chemistry(化学)

以前Math 2やPhysicsの記事を書きましたが、今回はSAT Subject Testのもう一つの(理系の)主要科目とも言えるChemistry(化学)について話していきたいと思います。SAT Chemistryを受験する人の多くは生物系・化学系の専攻を目指している人ですが、文系でChemistryを受ける人も多い印象です。

試験範囲

文系で化学基礎までしか履修していない場合と理系化学を履修した場合に分けて、SAT Chemistryの範囲と日本の(中学と)高校のカリキュラムを比較してみました。理系化学が一通り終わっている場合、SAT Chemistryの範囲のほとんどに対応できるということが分かると思います。一部最初の方で量子力学や原子軌道の知識が必要だったり、熱化学の分野で普段慣れていない記号やギブスの自由エネルギー、エントロピーなどの言葉出てきたりします。これらのトピックは有機化学をやる時に「発展」の内容として扱われることが多く、実際(僕が知っている限り)日本の大学入試に直接出題されることはありません。しかし、僕が1年の1学期に一般化学を履修した時、高校でこれらのトピックを学習した前提で授業が行われ、復習範囲として最初の週に少し触れた程度なので、アメリカの大学で化学を必要とするような学問(一部の工学専攻、生物・化学系など)を専攻したい場合は、SAT Chemistryを機にこれらを勉強するのも良いと思います。また、量子力学と聞いて難しいというイメージがあるかもしれませんが、少なくともSAT Chemistryなどに出る問題ではシュレディンガー方程式を解くことを必要とするものなどの高度な問題は出題されないので、独学でも全然対応可能です(もちろんオービタルなどの形はシュレディンガー方程式を解かないと導出できないという点はありますが、ここでは概念だけ知っていれば十分です)。文系で化学基礎までしか履修していなくても、同様にそこまで高度な数学などは必要ないので、独学でも対応できた方は多くいるようです。特に、文系だが理系科目のSubject Testを少なくとも1つ取っておきたい、という人はSAT PhysicsよりChemistryを選ぶ場合が多い印象です。

試験形式・例題

1時間で85問の選択肢問題を解きます。計算機は使用不可、周期表が与えられるという特徴があります。また、問題は主に次の3つの種類があります:

  1. Classification:選択肢が複数与えられて、その後の問題に最も適しているものを選ぶ。
  2. Relationship Analysis:〜because〜という形の問題。”because”の前の文とその後の文がそれぞれ正しいかを判定し、更に2つ目の文が1つ目の文の説明になっているかどうかを答える。
  3. 5-Choice Completion Questions:一般的な選択肢問題

まず、Classification問題の例を見ていきましょう(全ての問題はCollege Boardより):

問題:Reacts with an equal volume of 0.05 M Ba(OH)2 to form a solution with pH = 7:

選択肢:A) 0.1 M HCl B) 0.1 M NaCl C) 0.1 M HC2H3O2 D) 0.1 M CH3OH E) 0.1 M KOH

この問題は一応”Hard”という難易度を付けられていますが、酸と塩基をしっかり理解していればすぐ答えられると思います。特に、水酸化バリウムBa(OH)2が強塩基であるという知識があれば、あとは1Lの水酸化バリウムに対して濃度が0.05 Mであることより水酸化物イオンOH0.05\rm{M} \times 1 \rm{L} \times 2 = 0.1 \rm{mol}ができるので同じく1Lに対して0.1 molの水素イオンをくれる溶液を探すという方針が出てくると思います。ここで、C)の酢酸は弱酸なのでpH>7になるので、答えは強酸であるA)の塩酸HClになります。

※ちなみに、高校化学ではmol/Lを使うと思いますが、SATなどにはM(モーラー・モル)という単位が出てきます。mol/L = Mです。

では、Relationship Analysisの問題:

問題:

[I] Diamond has a high melting point

BECAUSE

[II] in a diamond crystal, the carbon atoms are held in place by ionic bonds.

これは結構知識問題っていう側面が強い気がしますが、ダイアモンドは確かに融点が高い(3550度以上)ので、[I]はTrueです。しかし、ダイヤの炭素原子はイオン結合ではなく、共有結合で結ばれているので[II]はFalseです。これも知識で答えられますが、イオン結合は電気陰性度の差が大きい原子同士、共有結合は電気陰性度が近いもの同士で起こるということから答えを「導く」こともできます。ちなみに、今回は明らかですが、\%IC = 100\%\times (1-e^{-\frac{(X_A-X_B)^2}{4}})という式(ここで、X_A, X_Bはそれぞれの電気陰性度)からイオン結合か共有結合に近いかを判断することもできます。最後に、[II]は[I]の説明になっていない(そもそも正しくない)のでCE (Correct Explanation)ではないです。

3つ目の種類の問題は、一般的な選択肢問題です。例題を見ていきましょう:

水素14%、炭素86%と言われているので取り敢えず比をとると、\rm{C:H} = 86:14になります。実際の試験では周期表が使えるので覚える必要はありませんが、原子量がそれぞれC=12, H=1(問題を解くうちに覚えている場合が多いですね)であることにより、mol(物質量)の比に変えると\rm{C:H} = \frac{86}{12}:\frac{14}{1}= 7.166....:14\approx 1:2なので組成式(empirical formula)はCH2です(選択肢B)。問題に分子量が与えられていないので、エチレン(C2H4)である可能性はありますが、100%そうとは言えないのでC)とD)を外します。A)は一応間違っていはいないですが、確認したところ模範解答はBと言っています。これは、多分”most informative statement”を選ばなければいけないということが理由であると考えられます。

日本の高校化学ではあまり扱われない電子配置の話に関する基本的な問題も載せておきます:

問題:Has electron configuration 1s^2 2s^2 2p^6 3s^2 3p^4

選択肢:A) Ar B) O C) S D) TI E) U

ここで簡単に電子軌道の説明をすると、中学・高校では電子が原子核の周りの軌道を回っている(ボーア模型)と学びますが、実は電子はエネルギーが異なる電子軌道というものに入っています。問題文に出てきているsとpはそれぞれ球、亜鈴状の形の軌道で、電子がそこにあるかもしれない確率と関係しています。

余談:厳密に言うと、軌道はシュレディンガー方程式から出てきた波動関数で、その二乗が確率密度を表しています。例えば、水素原子の1s軌道(基底状態)の場合、シュレディンガー方程式H\psi = E \psiHはハミルトニアン(力学的エネルギー)と言う演算子で、Eはエネルギー準位)から出てきた波動関数は極座標では\psi (r,\theta,\phi) = (\frac{1}{\pi a_0 ^3})^{1/2} e^{-r/a_0}で、2乗すると\psi^2(r,\theta,\phi) = \frac{1}{\pi a_0 ^3}e^{-2r/a_0}と言う確率密度が出てきます。ここで、a_0 = \frac{4\pi \epsilon_0 \hbar ^2}{m_e e^2}=52.9 \rm{pm}はボーア半径と呼ばれます。これは球面座標系における動径rにしか依存しないので、1s軌道が球の形をしているのが分かると思います(実際の確率はP(r) = 4\pi r^2 \psi^2(r)になります)。ちなみに、p軌道(例えば2p_x)は\psi (r,\theta,\phi) = \frac{1}{2\sqrt{6}} (\frac{1}{a_0})^{3/2} \frac{r}{a_0} e^{-r/2a_0} \times (\frac{3}{4\pi})^{1/2} \sin\theta \cos\phi = \frac{1}{32\pi {a_0}^5}re^{-r/2a_0}\sin\theta \cos\phiと言うもう少し複雑な式で表されます。

Electronic Orbitals - Chemistry LibreTexts
Image from Chemistry LibreTexts

ただ、少なくともSAT Chemistryの問題に限っては、このような知識はそこまで必要ありません。電子が低エネルギーの軌道から入り(構造原理・Aufbau Principle)、各軌道に最大2個の(スピンが異なる)電子が入れて(パウリの禁止律)、同じエネルギーの軌道に入る場合はまずスピンの方向が同じ向きになるように入る(フントの法則)ということを知っていると、あとは3(n = 3)と言う数字から第3周期にあり、M殻(n=3)に電子が2+4=6個あるので原子番号16番の硫黄S(選択肢C)を選べると思います。

対策法・勉強法

他の試験の対策の記事でも書いていますが、SAT Subject Test系の試験対策は基本的に:

  • Barron’s, Princeton Reviewなどの参考書1冊
  • The Official SAT Subject Test Study Guide(今回はもちろんChemistry版)

の2冊で十分だと思います。オービタルなどの未習範囲については、ネットに色々講義ノートや動画が載っているので、それを参考にして勉強し始めるのも良いかもしれません。また、英語に自信があるならば、直接Barron’sの参考書を読むのでも十分だと思います。他のSubject Testと同様、やはり一番のハードルは実際の内容ではなく、問題を英語で素早く理解し、解く必要があるという点です。英語のレベルにもよりますが、やはりどのレベルでも、日頃から重要な専門用語の英訳を調べたり、単語帳を使ったりするのが効果的なのではないかと思います。

他のSubject TestやSAT, AP対策はこちら!

音楽と学問の両立は可能!?Double Major/Dual Degree在学生の日常スケジュールを公開!

どうもこんにちは、こんこぼんこです。

ピアノ演奏と脳科学をノースウェスタン大学で二重専攻(Double Major)している三年生、と今までは自己紹介していたのですが、Weinberg College of Arts and SciencesとBienen School of Musicの二つの学位が卒業時に受け取ることができるDual Degreeに変換することに決めました!

毎クォーターごとに受けていた授業の数が多めだった為(普段4クレジットのところを平均6.5クレジットのペースで取り続けていました)、普通は5年かかるところを4年でDual Degreeで卒業できそう、ということをアドバイザーさんが教えてくれました。

実質クラスの量はDouble Majorの時とあまり変わりませんが、卒業するときに学士を2つ受け取る(Bachelor of Music & Bachelor of Arts)というところがDual Degreeに転換する上での大きな違いです。

さて、今回は私のDouble Major/Dual Degree生徒としての日常(コロナ以前)をシェアしていきたいと思います!

まず、平均的なDouble Major/Dual Degreeの生徒が取るクレジットの量について説明します。(もしクレジット制の話に興味のない方はスキップしてください)

各クォーター、Weinbergに所属する生徒は最大5.5クレジット分の授業を受けられますが、Bienenに所属している生徒の場合は最大7クレジットまで取れます。

その理由として、個人レッスンやアンサンブル(オーケストラ等)すなわち演奏メインのクラスが各1クレジットとしてカウントされるから、また、音楽の生徒はたくさんのクラスの量を取ることが多いから、などが挙げられます。

普段は各クラス1クレジット、そして科学のラボなどが0.34クレジットですが、音楽のクラスでは0.5クレジットの授業がたくさんあります。例えば、セオリー(Music Theory)、イアトレーニング(Aural Skills)、キーボード基礎(Keyboard Skills)などは、一年生のときにほとんどの生徒が受ける授業なのですが、全て0.5クレジットです。スタジオクラスなど週一に一時間しか会わないクラスなどは、0クレジットの場合もあります。

Double MajorやDual Degreeの場合、スケジュール構成はどうすればいいの?

ノースウェスタンは自分にあったスケジュールを組みやすくしてくれているので、いつクラスを取るかは自由自在!Prerequisitesなどがないクラスの場合、専攻または卒業に必要な単位は、在学生である期間の間どのクォーターで取ってもいいのです。

私の場合、一年生の頃は、ピアノ科のみで入学したためBienen School of Musicのクラスが比較的多かったです。1クォーターにBienenの授業の方を三科目、そしてWeinberg College of Arts and Sciencesの授業を二科目受けました。

こんこぼんこの年生の秋の授業構成はこんな感じでした:

  • Bienenのクラス:Keyboard Skills, Aural Skills, Music Theory, Piano lessons (個人レッスン), Piano Forum (0 credits), Studio Class (0 credits)
  • Weinbergのクラス:General Chemistry, Intro to Sociology, General Chemistry Lab (0.34 credits)

トータルで4.74クレジット。音楽Double Major/Dual Degreeの生徒の一般的なスケジュールに比べるとクレジットの数が若干少なめですが傾向は似ています。Dual Degreeの生徒は、平均的に5.5クレジットを毎クォーター取れば五年で順調に卒業できます。もし五年未満で卒業したい場合は、7クレジット近く取ることが必要になってくる感じです。

ノースウェスタンでは好きなクラスを好きな時にとっていいので、例えば一、二年の時は音楽のクラスを中心的に受け、三、四年生の間はWeinbergなど別学校(McCormick, School of Commなど)のクラスを中心的に受けることもできますし、その逆パターンなども全然あり得ます。

例えば、私の場合、三年生の時は、Weinbergのクラスを中心的に受けて、Bienenの方のクラスは個人レッスン (+0クレジットのStudio Class & Piano Forum)のみ受けました。

こんこぼんこの三年生の時のとあるクォーターの授業構成:

  • Bienenのクラス:Piano Lessons, Studio Class (0 credits), Piano Forum (0 credits)
  • Weinbergのクラス:Physics, Psychology, Neuroscience, Bioethics,  Expository Writing, Physics lab (0.34 credits)

この時のトータルは6.34クレジット、そしてご覧の通りWeinbergのクラスばかり(5.35 credits)受けていました。いつもは働いている研究所で単位をもらえるIndependent Research (1 credit)も足しているのですが、このクォーターのは単位を取りすぎるとオーバーロードになる為正式にはクレジットとして取らないまま研究も続けていました。これから四年生になりますが、四年生の時は音楽の授業を中心的にとっていくことになります。

実際の日常生活ってどんな感じなの?スケジュール公開!

これは人によってとっても異なりますが、今回は私個人の経験をもとにシェアしますね。

まず、私の基本的な週日スケジュールはこんな感じでした:

9:30am: 🛏 起床。ギリギリに起きます笑

10am-4pm: 📖 授業。授業の合間にお昼ご飯を食べたり、ラボに顔を出して実験をセットアップしたり。キックスクーターでTech(科学の授業が行われる建物)とBienen(音楽学校の建物)を行き来しています(徒歩12分くらいの距離なので10分間の休み時間で間に合うためには自転車などが必要になってきます)🛴

4-6pm:🧪 ラボで研究

6-7pm:🍝 夕飯

7-10pm: 🎹 ピアノの練習

10pm-2am:📓 学校の図書館で勉強

そして、試験が迫ってきている場合:

9:30am: 🛏 起床

10am-4pm:📖🍝🧪 授業、お昼ご飯、ラボ

4-6pm:🎹 ピアノの練習

6-7pm:🍝 夕飯

7pm-2am:📓 勉強

ピアノのコンクール、リサイタルやJury(実技試験)が迫ってきている場合:

9:30am: 🛏 起床

10am-4pm:📖🍝📓 授業、お昼ご飯、授業の合間に練習

4-6pm:🎹 ピアノの練習

6-7pm:🍝 夕飯

7-9pm:📓 勉強

9pm-2am:🎹 ピアノの練習

週末(土)はこんな感じ:

9am: 🛏 起床

9:30am-1pm:👭 クラブ活動

1-2pm:🍝 お昼ご飯

2-6pm: 📓 アルバイト先で勉強

6-8pm: 🍝👭 友達と一緒にご飯食べる・遊ぶ

8-11pm: 🎹 ピアノの練習

11pm-1am: 📓勉強

末(日)はこんな感じ:

7:30am: 🛏 起床

8am-1pm:🏥 病院でボランティア(移動時間含む)またはアルバイト

1-4pm:🍝🧹👚 お昼ご飯・洗濯・掃除・ゆっくりする

4-7pm: 🎹 ピアノの練習

7-10pm: 🍝👭 友達と遊んだり、夕飯を一緒に食べたりする

10pm-2am: 📓 勉強

もちろん基本のスケジュール以外にもイベントなどは結構あるので、その時はフレキシブルに対応しています。ラボにも毎日通うわけではないので、行かない日はアルバイトをしたり、友達とタピオカを飲みに行ったり、昼寝をしたりしてます。成績(GPA)をそこそこ保つことが前提なので、忙しすぎてスケジュールに限界を感じた時などは単位を一つ落としたり、ラボやボランティアからのおやすみをリクエストしたりしています。

結論:Double MajorやDual Degreeの場合大学生活は多分忙しくなるけど、時間を管理して自分の限界を知っていれば可能!

最後に

さて、音楽と科学を専攻している学生の日常生活シェア、いかがでしたか。Double Major/Dual Degreeとして音楽と学問も両立することは簡単とは言い難いですが、ノースウェスタン大学はそのように一つ以上の分野に興味を持つ生徒を全力でサポートしてくれるシステムなので理想の形だと個人的に思っています。音楽学校と他のUndergradの学校(Weinberg, McCormickなど)が一つのキャンパス内なため移動時間でのタイムロスが殆どない分その時間を勉強や練習などに費やせるところもいいと思います。Weinberg所属の場合専攻特有のアドバイザーに含めDual Degreeの場合は各学校でアドバイザーがつきますし、医学部に興味がある場合Prehealthのアドバイザーもつくなど、各分野で相談に乗ってくれる専門の方々とアポを取れば気軽に話せることも利点だと思います。

もし他に気になる点・質問などがありましたら、是非連絡お待ちしてます。

【受験生応援企画!】SAT Reasoning: Math (数学)

以前の記事でAPやSAT Subject Testの試験を取り上げましたが、今回はSATのメインの試験(Reasoning Test)の数学を見ていきたいと思います。SATのSubject TestのMath IIなどは選択科目なので文系受験者であったり受験する大学によっては必須でない一方、SAT Reasoningは恐らく全員が受験するメインの試験なので、必然的にSAT Mathも避けては通れない科目です。とは言え、SAT ReasoningのMathは全員が受ける共通試験であり、やはりアメリカ全国はもちろん、世界中の高校生の数学力を点数化して区別する目的があるため、全体の難易度としてはかなり易しめです。また、中高教育に関しては、平均的に見ると(※これは後で戻ってきます)日本の方がレベルが高いため、例え日本の受験数学が苦手であってもSAT ReasoningのMathで躓くことは、よっぽど基礎知識に欠落がない限り、殆どないと思います。

逆に、特にこのブログを読んでくださっている皆様が目指すような大学を受験する人は、ほぼ例外なくSAT Mathでちゃんと高得点を収めているので、少しでも微妙な点数を取ってしまうと入学審査官に数学の基礎力を疑われることになるので注意が必要です。多くの場合、大学の入学審査官は地域ごと、学校ごとに受験者を選抜していきます。よって、SAT Mathの平均点を余裕で超えていても油断できません。SAT Mathの平均点は大体500/800台と言われますが、特に日本から受験しているならば、同じ高校や同じ地域(=日本)の受験生はほぼ全員満点近く(少なくとも700点台)を取っているでしょう。特に海外経験が少なかったり、英語が苦手てReading and Writing Sectionでの高得点の取得が難しい受験生に取っては、SAT Mathがチャンスになるので、ちゃんと数学で満点近くを取ってReading and Writingで失った分を補って合計点(1600点満点)を上げていくことが大事になってきます。

余談:SAT Mathを見て「アメリカの学生・教育のレベルは本当に高いのか?」と逆に心配になることもあると思いますが、少なくとも僕の経験上、SAT Mathの難易度だけでアメリカの受験生の数学力や、大学の入学難易度を判断することはあまりできないと思います。他の記事でも書いていますが、まず、少なくとも皆さんが目指すような大学を受験している人は高校で大学教養レベルの内容を学習しているので、彼らに取ってもSAT Mathはかなり簡単です。実際、周りではSAT 1550/1600点以上、ACT 35/36点以上の人がほとんどです。僕の印象ではありますが、SATが簡単である理由は、共通な教育課程がある日本の高校生に比べてアメリカの高校生の学力の方がより広く分布している(上と下の差が大きい)という点もあると思います。

出題範囲

SATを作っているCollege Boardのホームページには、次のトピックを中心に問題が出題されると書いてあります:

  1. Heart of Algebra (19問):一次方程式、連立一次方程式、多くの分野で現れるような関数
  2. Problem Solving and Data Analysis (17問): 比率、パーセント計算、比例などの知識を科学や社会科学への応用、グラフ・統計学など
  3. Passport to Advanced Math (16問):自然科学、工学、経済学で現れる微積分や統計学を学ぶに当たって必要な基礎力

試験形式・例題

Math Sectionは計算機使用可のCalculator Portion(38問・55分)と計算機禁止のNo-Calculator Portion(20問・25分)に分かれています。また、全体58問中の45問が選択肢問題で、残りの13問はStudent-Produced Responseという「記述」問題です。後者は一応「記述」が必要ですが、国内受験の記述問題やAP試験のFree Response Questionのように長々と説明・証明や途中式を書くのではなく、ただ単に数字を実際書かなければならない(つまり、選ぶわけではない)だけ、という意味にの「記述」問題です。

実際の問題を見た方が難易度や形式のイメージがつきやすいと思うので、いくつかの例題を貼っておきます(問題はCollege Boardより):

No-Calculator Sectionの例題です。College Boardの解説には”particularly challenging question”という評価がされていますが、割と普通の図形問題だと感じる人も多いでしょう。円の中心OからCDに垂線を下ろし、その足をHとして、△ODHにおいて三平方の定理を用いるだけです。求めるべき距離をdとすると、d^2+(\frac{1}{2}\cdot\frac{4}{3}r)^2=r^2かつd>0よりd=\frac{\sqrt{5}}{3}rなので、答えは選択肢D).

Calculator Sectionの問題です。計算機を使用できるからと言って毎回使うと逆に解くスピードが遅くなる可能性があるので、いつ使うかを見極める練習も大事になってきます。で、この問題はそもそも計算機を使わない問題です。これは数学的にはかなり簡単な問題で、近似直線の傾きが変化の割合を示していることを知っていればすぐにAであると分かります。選択肢Bでは傾きを\frac{\Delta y}{\Delta x}ではなく\frac{\Delta x}{\Delta y}であると勘違いしていて、CとBはそもそも傾きとは関係なく、軸との交点での値です。問題の数学的側面はかなり易しいですが、問題設定と選択肢の意味を英語で読み取って理解する必要があるので、日頃から英語で数学を受けていない人にとっては読解力の練習が必要になってくるかもしれません。

対策法

他の試験と同じですが、多くの受験生にとってはやはり内容(数学)自体の理解より、英語で問題を読んで解くという側面が課題になってくると思います。余裕があるなら、日頃の数学の授業で出てくる単語の英訳を調べてノートに書き込んだり、英語の数学用語集などを印刷(または自分でまとめる)などをして単語力をアップするのが良いと思います。また、実際の試験を受ける前には、青い過去問の本を購入し、何年分かを解くのが良いでしょう。

【受験生応援企画!】AP Physics C: Electricity and Magnetism(電磁気)

前回はAP Physics C: Mechanics(力学)について書きましたので、今回は続いてAP Physics C: Electricity and Magnetismの試験を見ていきたいと思います。ちなみに、他の試験(AP Calculus BCやSATなど)の対策方法について書いた記事はこちらからアクセスできるので、是非読んでみてください!

試験範囲・試験対策

  1. Electrostatics (静電気力)
  2. Conductors, Capacitors, Dielectrics(導体・コンデンサ・誘電体)
  3. Electric Circuits(電気回路)
  4. Magnetic Fields(磁場)
  5. Electromagnetism(電磁気)

これらのトピック自体は高校物理で学びますが、AP Physics C: Mechanicsと同様、ここでは実際どのようにして高校物理で使っていた公式が出てきたのか、という導出の部分が重点的に問われます。駿台文庫の『新・物理入門』などに載っている内容に似ています。

説明だけだと高校物理と何が違うのかが分かりにくいと思うので、例として高校物理の教科書で(多くの場合)証明なしで出される円形電流の中心の磁束密度B=\frac{\mu_0 I}{2R}の公式について考えましょう。これは実はビオ・サバールの法則という実験を通して求められた式から出てきています。ビオ・サバールの法則はd\bold{B}=\frac{\mu_0}{4\pi}\frac{Id\bold{s}\times \bold{r}}{r^3}という式で表され、電流断片Id\bold{s}\bold{r}が垂直なので、dB = \frac{\mu_0 I ds \sin{\theta}}{4\pi R^2}よりB=\frac{\mu_0 I}{4\pi R^2}\oint_{C}ds=\frac{\mu_0 I}{4\pi R^2}(2\pi R)=\frac{\mu_0 I}{2R}が出てきます。このように、微分積分を用いて高校の教科書に載っている単純な形以外のものも対応できる式を各章で扱われます。

試験対策としては、ほぼ同じテスト(内容が違うだけ)なので、AP Physics C: Mechanicsの記事で書いた対策法で大丈夫だと思います。オススメの参考書やYouTubeの動画も同じです。MITのWalter Lewin先生の動画は、”8.02 Physics II: Electricity and Magnetism”シリーズになります。

例題

では、例題で試験の出題傾向や難易度などを見ていきましょう。まずはMultiple Choice Sectionの問題から:

公開されている問題が少ないのでまた1998年度の過去問からの問題です。誘電起電力\varepsilon = bAt^{1/2}が与えられているので、ファラデーの電磁誘導の法則\varepsilon = -\frac{d\Phi}{dt}を使います(高校物理の教科書ではd\Deltaですね)。面積Aは定数なので\varepsilon = -\frac{d\Phi}{dt}=-A\frac{dB}{dt}で、これを\varepsilon = bAt^{1/2}と合わせるとbAt^{1/2}=-A\frac{dB}{dt}。両辺からAを消去し、式変形するとB(t)=-\int bt^{1/2}dt=-\frac{2}{3}bt^{3/2}+C。よって、(E)が正解(マイナスは磁束密度\bold{B}と面積要素d\bold{S}が逆向きと考えると+になり、C=0を取る。)。

Multiple Choiceが終わった後は、Free Response Questions(記述問題)に入ります。College Boardが公開している2019年度の過去問を見てみましょう:

AP Physics C: Mechanicsでもそうですが、E&Mの方がMechanicsに比べて実験問題などが多い印象です。実際、この問題の続きの小問(ここでは省略)はある学生の解答の間違いを指摘する問題になっています。(a)を解説すると、まず(i)の答えは+y軸方向の矢印。(ii)では細い円柱と同じ軸を持ち、点P(0,c)を含む閉曲面を使う。(iii)ではガウスの法則を使う。\oint \bold{E}\cdot d\bold{A} = \frac{Q}{\varepsilon_0}よりEA=\frac{Q}{\varepsilon_0}。ここで、A = 2\pi cLQ=\lambda LなのでE\cdot 2 \pi c L = \frac{\lambda L}{\varepsilon_0}よりE=\frac{\lambda}{2\pi \epsilon_0 c}になる。

【受験生応援企画!】AP Physics C: Mechanics(力学)対策

皆さんお久しぶりです。前回はAP Calculus BCの試験について書きましたので、僕が高3(厳密に言うと高校卒業2ヶ月後)の時に受験したAP Physics C: Mechanicsの試験を見ていきたいと思います。ちなみに、他の試験(AP Calculus BCやSATなど)の対策方法について書いた記事はこちらからアクセスできるので、是非読んでみてください!

AP Physics Cって何?

海外の高校やインターに通っていない限り、米国大学受験を考えていてもAP Physics Cを聞いたことある人は少ないと思います。僕の場合も、国内の(インターではない)高校に通っていたため、そもそもAP試験を知ったのが高3の夏辺りだった気がします。AP試験自体についてはこちらの記事で紹介しているのでここではあまり長く書きませんが、AP試験は大体5月に行われるので、高3の夏休みに初めて「AP (Advanced Placement) Exam」という言葉を耳にした僕にとっては、高校卒業後の2ヶ月後がAP試験を受験する最後(かつ唯一の)チャンスでした。アメリカの大学の入学審査官は国内高校ではもちろんAPカリキュラムというものが存在しないことは分かっているので、受験時にAP試験の欄で見せるものがなくても(国内高校出身の場合は)そこまで不利にはならないですが、やはり以前の記事で書いた通り、入学後にも色々楽になるので、高2以下の受験生には是非挑戦してほしいと思っています。同じ米国大学に留学している人に聞いてみると、やはり良い大学に入っている人は(インターに通っていなくても)高校留学や独学を通してAP試験を受験していた人が一定数いるようです。特に数学IIIの範囲と被っているところが多いため、AP Calculus BCを高校時代受験していた人が多いです。

実はAP Physicsという科目は

と4つの試験で構成されます。今回のAP Physics C: Mechanicsは、主に工学部や(物理学科以外の)理学部の1年生が履修する物理の授業の内容を扱っています。

試験範囲

  1. Kinematics(力学)
  2. Newton’s Laws of Motion(運動の法則)
  3. Work, Energy, and Power (仕事、エネルギー、仕事率)
  4. Systems of Particles and Linear Momentum (質点系、直線運動量)
  5. Rotation(回転運動)
  6. Oscillations(振動)
  7. Gravitation(万有引力)

理系で物理選択の場合、回転運動以外は全て高校で学ぶと思いますが、AP Physics C: Mechanicsではこれらで使用する公式などを微積で導き、より一般的な運動の考察が求められます。(国内大学向けの)大学受験の塾に通っている場合は、公式の導出などで微積を使うことがあると思いますが、内容的にはそれらのテキスト(または駿台文庫の『新・物理入門』)に載っているものと似ています。

試験対策

塾や学校の先生が微積を使わない場合、これらを独学で習得する必要があります。僕の場合、大学受験終了後にAmazonでBarron’sのAP Physics Cの対策本を購入しました。Barron’sの本は過去問形式の練習問題が多い他、教科書的な側面もあるので、正直この本だけで全然十分だと思います。勉強方法としては、毎日1,2チャプターを進め、

内容をノートにまとめる→公式の導出を理解する→例題を見ながらその範囲の典型問題(典型パターン)の方針を頭に入れる→チャプターの最後の練習問題を解く

という流れが効果的でした。回転運動など、日本の高校範囲に入っていないものについてはMITのProf. Walter Lewinの講義(8.01 Classical Mechanicsというシリーズ)を見て補足していました。Prof. Walter Lewinの授業はかなり人気があり、凄く分かりやすいですが、大体動画一本が1時間ぐらいなので、AP Physics C専用の動画など(平均10-20分程度?)を見るのもお勧めします。また、試験はもちろん英語で、記述問題も英語で書かなければいけないのでやはり英語で学ぶのがベストですが、日本語の動画や資料を参考するのも良いかもしれません。

例題

では、日本の高校範囲ではあまり扱われない回転運動の例題を見ていきましょう。以下はCollege Boardのウェブサイトに載っている2018の過去問からの問題です。AP Physics Cは記述問題と選択問題の両方がありますが、これは記述問題(Free Response Question)です。

【簡単な解説(a)-(c)】

(a): 公式I=\int r^2 dmを使う。dm = \lambda dx = \frac{2M}{L^2}xdxなのでI=\int_{0}^{L} x^2 \frac{2M}{L^2} xdx = \frac{1}{2} ML^2. よって、題意は示された。

(b)それぞれの慣性モーメントを足すと、I_{tot} = ML^2 + 3(\frac{1}{2} ML^2) = \frac{5}{2} ML^2を得る。

(c) \tau = I \alphaを使う。Fは一定と言われてるので、\alpha = \frac{\Delta \omega}{\Delta t}=\frac{\omega-0}{\Delta t}ということを考慮し、FL=\frac{5}{2}ML^2 \frac{\omega}{\Delta t}\omegaについて解くと\omega = \frac{2F \Delta t}{5ML}を得る。

【(続き)簡単な解説(d)-(e)】

(d) 垂直抗力、重力、摩擦力が働く(図は省略)。

(e) 力学的エネルギー保存則を使う。\frac{1}{2}mv^2+\frac{1}{2}I\omega ^2 = mgHよりH= \frac{4ML^2+I_{tot}}{8Mg}\omega ^2.

Multiple Choiceの方では、以下のような問題が一般的です;

【問34(1998年度)】この問題は、1998年度の問題です(記述問題は毎年公開されるのに、なぜか最近のMultiple Choiceの問題は全然公開されていません)。高校物理でも良く見かける終端速度関連の問題です。重力と空気抵抗が釣り合うとa =0になり、その時v_{\infty} = \frac{g}{b}なので、t \to \inftyの時v \to \frac{g}{b}になる選択肢(A)が正解です。実際、a = \frac{dv}{dt} = g-bvという微分方程式を解くとv(t)=\frac{g}{b}+Ce^{-bt}になります。

【問27 (1998年度)】F=-\frac{dU}{dx}より、\Delta U = -\int_{0}^{2} F(x)dx =-\int_{0}^{2}(40x-6x^2)dx=-64 [\textrm{J}]. ここでのFはバネを伸ばすために必要な力である。よって、求めるべきは値は64 [\textrm{J}]で、答えは(D).